もり~ゆ 野巡りの日々、第3章

身近な場所を始め、自然のことなどを書いていきます。

「野生生物は「やさしさ」だけで守れるか?」読みました。

奄美大島マングースが完全に駆除成功となったと報道されました。

自然保護などの活動を始めた黎明期の頃は、大方皆、生き物への愛情や慈しむ気持に何ら疑問を持つことも無く語られていたのではなかったか、と思います。

様々な生き物の命を脅かす要因は全て「悪」であり、被害を受ける生き物は可愛そうだ、だから守らねば、というシンプルな物だったと思います。勿論それは今でもあって良い物であるし、その気持はそれで大事にはしたいものだとも思います。

 

しかし、色んな自然環境や人との関わりの中での課題を知れば知るほど、そしてその課題が複雑であればあるほど、その見方だけでは危ういものもあり、時に冷静な、客観視された見方、違う視点、そして感情とは違う対処が必要にもなってくることを知るようになりました。

 

とはいえ、その中の葛藤もある。

 

本書はそんな葛藤の様々な事例について、各地の自然の生き物に関わる様々な方のインタビューや、取材、そして時には著者の方々3人の実体験も踏まえて書かれた本です。

 

ここ最近は、環境問題で課題になっている外来種問題があります。

以前私は旧旧ブログで、学校などの環境教育に外来種の駆除も取り入れてみたら、と書いたことがあるのですが、「外来種=悪者」という見方を最初に植え付ける様な導引に疑問を呈する考えもあることを知りました。

それよりも外来種も交えた、在来種もある環境全体を知って欲しいという。

しかし一方で、ナガエツルノゲイトウのような侵略性が高い外来種に雄対しては、一刻も早い対応を市民や専門家総出で行わないと手遅れになってしまうケースでは、子ども大人も巻き込んだ駆除活動を実施するケースも。

このあたりは一筋縄ではいかないし、どれが適切かは状況によっても違ってくるのでしょう・・・。

 

そして、近年増えすぎてしまっているシカやクマの扱いに対して、現実的には駆除しないと人の社会に危害が及ぶケースもあったりします。

単に「動物を殺すなんて、酷い、可愛そう」では解決出来なくなっている状況。

 

阿蘇での草地植物の維持のための野焼きの実際の活動についての取材も興味深く読みました。しかしなり手が減っている現状も。

 

なんにでもそうなのですが、ある問題に関して気持や関心があって行動しようとするとき、最初のその気持・感情は大事にはしたいけれど、

様々な見方を知り、そして現実と客観的な見方、色んな立場からの意見などを踏まえ、どれが最適な解決方法なのかを、時には悩みながら実践していくフェーズになっていくのを感じます。

当初、ある島で漁師さんがアオウミガメを傷つけ放置という事件に心痛め、酷いことをと思ったのを覚えていますが、それは網に1度に対処しきれないほどの多くのウミガメがかかる事態となってしまい、どうにもならなかったというのを読みました。

 

単純な正義や悪は無いか少ないのでしょう。

 

どんなことにも様々な検討の積み重ねなのだと思うのです。時には冷徹さも要るのかも知れない・・・。

本書がそんなフェーズやプロセスに向き合う見方の参考になるのではと思っています。

ただ、文全体はなんだか優しすぎる感じもしてしまったかな。

以前ツキノワグマが増えてきている事への警鐘をある写真家さんがブログでかなりシビアな見方で書いていたのを読んでいたりしていたので。

 

さて、冒頭のマングースのこと。

私が子どもの頃は、毒を持つヘビ、ハブの退治のために持ち込まれたという話を聞いて、良い動物なんだと思ったりしていました。とあるスケート場で冬期以外の営業時「ハブ対マングース」のショーも見ていてマングースを応援していたことも覚えている・・・しかしそれが外来種問題となり、肝心のハブよりも食べられて絶滅の恐れが増す生き物が出てしまった・・・。

命を奪う「駆除」に葛藤しつつ、一旦駆除でいなくなったように見えてもどこかに生き残りがいてはいけないので、何年もかけて本当にいないことを確認するといった作業が続いていたそうです。

 

また、繰り返し読んでみたいですね。